一般社団法人日本左官業組合連合会Japan Plasterers' association

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2019年4月7日

技術紹介

左官工法の実際とテクスチュアの表現

多様化する建築主のニーズに応える左官工法の意匠性・機能性・安全性。



 

磨きぬかれた技と自然の持つエネルギーが床・壁・天井に新たな生命力を注ぎ込む。

見るほどに味わいのある肌合い。これは技能工の鏝さばきによる左官工法ならではの表現である。長年にわたって培われてきた日本の住まいに対する知恵と伝統技能によって確立された多くの工法は、明治期に洋風建築工法をも吸収し、今もなお現代建築に柔軟に対応し続けている。

さて、その表面仕上げを支えているのは、基本となる材料、混ぜもの、そして仕上げの3本の柱である。これらの組み合わせによって表現方法は無限に広がり、そのバリエーションは今日も、新しい材料や工法の出現により、ますます多彩なものとなりつつある。

しかし、左官工法は単に意匠だけを意識したものではない。機能的にも優れた力を発揮するのである。建物自体の耐久性を高めることは、古くから残る歴史的建造物の多くが、今もなおその美観を保ち続けていることによりはっきりと証明されている。

その理由の一つは、塗り壁自身が持つ湿度調整機能にある。左官工法による塗り壁はそれ自体が湿度を調整し、室内に湿気をため込まない。したがって乾式工法で問題とされるような壁面の結露が生じず、必要以上に防カビ剤や防ダニ剤を用いずに済むのである。

このことは、左官工法が建築物の耐久性を向上させるだけではなく、住まいの健康や環境保護の観点から見ても高い効果を発揮することを意味する。今後の住環境を考慮すれば、非常に有効な工法だと言えよう。しかも長くクオリティーを保ち続けるので、経済的な面でも優れた工法だと考えられる。

 

磨き込むことにより鏡のような優雅な光沢を得られる漆喰(しっくい)塗、藁スサや色砂などの素材感を混ぜ込んだ土壁塗、素材のなめらかさを存分に活かしてさまざまな造形美をもたらす石膏プラスター塗、骨材が持つ天然の素材感を表面に出して表現する洗い出し、研ぎ出し仕上げなど、左官工法はまさに無限の表現力を持つ。さらに左官技能工の技に自然の力も加わって、二つとして同じものは存在しない。

左官工法は新建材を用いた乾式工法と比較すれば、非常に手間のかかる作業であることは言うまでもないだろう。しかし、完成した床・壁・天井の持つ表情や機能性は決して乾式工法では実現不可能な世界なのだ。既調合材の登場により大幅な工期短縮も可能となった今、左官工法がますます注目されることは間違いない。

左官建築物の紹介

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2010年5月12日

各種提出書類ほか

労働者名簿(B4)・工程表(B4)・現場別工程表(B4)・予算書(A4) (83KB)Microsoft Excel用
左官工事施工要領書 (1,067KB) Microsoft Word用

建築基準法(平成16年6月)改正による対応について(PDF)
建築基準法改正 (木造軸組工法の確認申請図書について)

・モルタル外装材の層間変形角と損傷状況について
・土塗壁(真壁)の層間変形角と損傷状況について
・木造軸組工法の確認申請図書について
新しい建築確認手続きの要点(PDF)
日本建築学会 災害委員会 (2007年3月25日能登半島地震)

★能登半島地震における左官関連被害状況報告(PDF)

 意匠性の高いテクスチュアが表現できる高級仕上げ

現場テラゾー仕上げと研ぎ出し仕上げとの最大の違いは、練り合わせる種石の大きさにある。テラゾーで使用されるのは15mmのふるいを通過する大きさの種石。それだけに種石という素材の持ち味を十分に活かした、より意匠性の高いテクスチュアが表現できる。その意味では、より現代的な表現に可能性を見いだせる工法と言えるだろう。

美濃黒石テラゾー仕上げ

歩掛2m2/人日
特徴 種石と顔料を練り合わせたものをモルタル下地に塗り付け、硬化したところを研磨している。

 

1カナリヤ石 2白サンゴ石 3黄立山石
4アワビ貝 5鎧石 6寒水石 7黒大理石
8紅サンゴ石 9加茂更紗石 10白鷹石 11オニックス石
12鳴戸石 13国華石 14白滝石 15黒加茂石
16吉野桜石 17牡丹石

現場テラゾー仕上げ

磨耗に強いうえ、自然の素材感を用いたさまざまな意匠が可能。

特色

大理石などの砕石とセメントを混練りしたものを塗り付け、硬化後に表面を研磨・艶出しして仕上げる工法。磨耗に強く、耐久性に優れているうえ、砕石の種類や着色顔料の選定によって、自然な素材感と豊かな表情を出すことができる。とりわけその意匠性の高さから、広範な用途に適応する工法と言える。

適した部位

主にコンクリート構造の床・壁・腰などに用いられる。

性能評価

混入する種石が高品質な骨材としての機能を持つため、セメント以上に耐久性が高く、防火性にも優れている。

施工工程

床面の現場テラゾー工法には、下地床面に直接セメントモルタルを塗って密着させる「密着工法」のほか、床面にルーフィング類を敷き、その上にモルタルで下塗りをする「絶縁工法」、床面に5~6mm厚の砂を敷き、その上に下塗りモルタルや砂利を混和したモルタルを塗り籠める「中間工法」などがある。目地施工は下塗りの前日に行っておき、固練りの塗り材を叩き締めながら塗り付けていく。一般にテラゾー全体の塗り厚は、40~50mm程度が必要とされている。

施工工程断面図(床面密着工法:コンクリート下地の場合)

施工工程フローチャート(床面密着工法:コンクリート下地の場合)

下地

主にコンクリート下地、コンクリートブロック下地のほか、セメントモルタル下地に適用される。床面施工の場合は特に、下地が平滑に仕上げられていることを確認し、凹凸がある場合は、付け送りを行う。

材料と調合

床テラゾーには、15mmのふるいを通過する大きさのもので、磨耗性の低いテラゾー用種石を使う。広く採用されているのは、カナリヤ石・オニックス石など。調合では水を少なくし、モルタルの混練りよりやや固めに行う。下地モルタルに混入する川砂の粒度は、荒目のものを使用する。

セメント 川砂 白石セメント 種石
下塗りモルタル 1 2
テラゾー塗材 1 2~2.5

仕上げ

テラゾーに用いる種石はサイズが大きいため、上塗り付けでは、目地棒より1~1.5mm高く塗っておく。続いて、塗り材をコンクリートのように打ち込んで種石と種石の間を密着させる。目地棒の際や継ぎ目の角は、鏝かバイブレーターで叩いて十分に締め込んでいくことが肝心である。硬化時間をよく取った後、小形研磨機やその他の工具を使って荒研ぎにかかる。40~60番の金剛砥石で研いだ後、表面をよくふき、目つぶし粉を擦り込んで目つぶしを行う。数日放置した後、180番または220番の砥石を使って、中研ぎし、上塗りと同じ調合のセメントで目つぶしする。乾燥後、300番砥石で研ぎ上げ、浄源寺砥石で仕上げる。仕上げ後は、しゅう酸などでアク止めを行い、最後に艶出しのためのワックス処理を施す。

メンテナンス

亀裂や剥離を避けるために目地区画の大きさは、なるべく1m×1m以内に収める。腰および壁への施工で下地が木造の場合は、亀裂が生じそうな個所を見計らって目地を入れておく。表面の艶出しにはワックスを薄く塗り、フェルト様の布で擦り込む。

目地入れの作業

テラゾー塗材上塗りの施工

荒研ぎの作業

柔軟性と融通性が高く、さまざまな色彩・テクスチュア表現が可能

合成樹脂床塗材の種類は数多く開発されており、さまざまな色彩・テクスチュアの表現が可能。塗り材それ自体が接着剤としての機能を持っているだけに、いろいろな骨材を混入させて多彩なテクスチュアを得ることができる。
合成樹脂床塗仕上げ
特徴 エポキシ樹脂系合成樹脂を硬化剤と混合した後、天然石骨材とよく混練りしたものを、鏝塗りして仕上げる。骨材により多彩なテクスチュアを表現できる。
1   2   3   4
5   6   7   8
9   10   11   12
13   14   15    

合成樹脂床塗仕上げ
耐久性と柔軟性に優れ、多彩なテクスチュアの選択が可能
■特色
合成樹脂の床塗材は、パネルなどの工場生産品と比べて継ぎ目がないうえ、現場での「おさまり」が利くというメリットがある。また耐久性にも優れ、下地に対する接着性も高いことから適応範囲は幅広い。製品によっては多彩なテクスチュアが表現できる意匠性の高いものもあり、用途によってさまざまに選択できる。ここでは骨材として天然石を使用したものを紹介する。
■適した部位
主としてコンクリート、モルタル下地の床・歩道・プールサイドなどに用いられる。
■性能評価
広く使われているのは、酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、合成ゴム樹脂系の三つの系統で、いずれも耐久性の点で優れており、製品によっては耐薬品性や防水性も高い。天然石使用の製品は透水性、ノンスリップ性に優れる。
■施工工程
原則として下地は十分に乾燥させておく。また樹脂の粒子は極めて細かく流動的であるので、下地の接着面は、金鏝などで十分に押さえ込むなどして平滑にする。加えて、各塗りの層の硬化や乾燥は十分に行い、ほこりや油脂などが付着しないように留意して作業を進める。また製品による可使時間を守って使用すること。
施工工程断面図
(エポキシ樹脂系:コンクリート下地の場合)
※モルタル塗りを省き、コンクリート直押仕上げとする場合もある。
施工工程フローチャート
(エポキシ樹脂系:コンクリート下地の場合)
■下地
コンクリートはじめ、セメントモルタル、ALCパネル、PLパネルなどあらゆる種類の下地に適応できる。
■材料と調合
製品ごとに差異はあるものの、材料は、合成樹脂+触媒+添加剤という主材に加えて、骨材+顔料を配合するというのが基本的な組成である。
■仕上げ
樹脂の中でも特に速乾性のもの(エポキシ樹脂系など)は、施工時間が限定されるので、素早く塗り付けていく必要がある。所要量を均一に、地ムラや饅ムラなく平滑になるように留意する。樹脂系材料の一般的な特徴として、硬化は速いが、過酷な使用に耐えるまで硬化するには1週間から2週間ほどかかる場合がある。そのため施工完了後は、表面にワックスをかけたり、ビニールシートをかけるなどして養生を必要とする場合がある。
■メンテナンス
合成樹脂自体の収縮率はごく小さいものだが、下地が収縮してひび割れると表面にもクラックが生じやすいので、事前に施工の段階で下地の処理を十分に施しておく必要がある。
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豊富な形状のバリエーション。工法上の工夫でより豊かな表情が得られる

現在、外装仕上げの主流になっている建築用仕上げ塗り材は、ローラー仕上げを施すことにより、さまざまな立体紋様を中心に豊富な形状のテクスチュアが得られるようになっている。同時に、防水性をはじめとする機能性も追求され、用途に応じた選択肢の幅は相当広い。材料の性質により、テクニックを存分に活かした仕上げが可能である。
ローラー仕上げA
歩掛 10m2/人日
特徴 塗り材の素材感と各種デザインローラーによる立体紋構との組み合わせで、種々のナクスチュアが創り出せる。
ローラー仕上げB   ローラー仕上げC   ローラー仕上げD   ローラー仕上げ(ヘッドカット)E
ローラー仕上げ(ヘッドカット)F   ローラー仕上げ(ヘッドカット)G   ローラー仕上げ(ヘッドカット)H   ローラー仕上げ(ヘッドカット)I
ローラー仕上げ(ヘッドカット)J   ローラー仕上げ(ヘッドカット)K   ローラー仕上げ(ヘッドカット)L    

ローラー仕上げ
求められるニーズに応じて、多様なテクスチュアが選択可能
■特色
仕上げ塗り材は近年になって開発が進み、現場のニーズにしたがって多種多様な色・光沢・性質を持った製品が市場に出回るようになった。そのうち造形的なニーズに応じて、ローラーによりさまざまなテクスチュアを表現する工法がローラー仕上げである。仕上げ塗り材の表面をローラーで押さえる工法が基本で、意匠性の高い各種パターンが形成される。
■適した部位
仕上げ塗り材が用いられる内外壁で、特に人目にさらされる部位。
■性能評価
各仕上げ材に定められた施工工程をいかに正確に行うかで、仕上げのよしあしはもちろん、耐久性が決定する要素が大きい。
■施工工程
大きく分類すると、仕上げ塗り材仕上げには単層仕上げ塗りと複層仕上げ塗り工法がある。前者を単純に言えば、材料を平面に塗り付けることで完結するわけだが、その際、工法上のテクニックとしてパターンローラーを使用することにより、多彩な表情を壁面に創り出すことができる。後者では、テクスチュアのパターンを形成する中塗り工程で用いられるのが一般的である。
施工工程断面図
(複層仕上げ塗り:コンクリート下地の場合)
施工工程フローチャート
(複層仕上げ塗り:コンクリート仕上げの場合)
■下地
多様な下地に適応するが、製造業者の指定する下地を使用するのが基本。仕上げ材の結合材がセメント系か合成樹脂エマルション系であるかによって、適する下地が異なるので注意を要する。下地によっては、表面の吸収性を均一にするためのシーラー塗りを施す場合もある。
■材料と調合
基本的には既製品の材料そのものを使用する。製品によっては有色もしくは透明塗料を上塗りして、発色や艶出しを図ったり、耐久性を高めることもある。
■仕上げ
仕上げ材を鏝塗りした後、ローラーで転圧しパターンを形成する場合は、一度に大きな面積を施工すると均一な塗り厚になりにくいので注意する。ローラーによる塗り付けは、ローラーの紋様に応じてくばり塗りし、その後同じローラーで塗り厚をならしていく。また、ローラーによる凸部処理(ヘッドカット)は、見本を参考にしながら仕上げ材の定着の具合を確認したうえで、タイミング良く行う。
■メンテナンス
材料に含まれる顔料や骨材が均等に分散していないと、色ムラや紋様ムラが生じる。現場での試し塗りを必ず行うことが肝要。指定された塗り量と施工法を守り、均一に塗り付けるように留意する。
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多様な仕上げに適応し、豊かな表情を持ったテクスチュアを表現できる

珪藻土は、素材的にはセメント系と土壁系の両方の特質を備えており、骨材や施工方法を工夫することでさまざまなテクスチュアが表現できる。一般的な仕上げとしては、擬石調仕上げ、砂岩状仕上げのほか、土壁風の仕上げも可能。仕上がり具合は、手間と時間をかければそれだけより良いものが得られる。
珪藻土掻き落とし仕上げ
歩掛 3m2/人日
特徴 仕上げ材を平滑に鏝塗りして硬化した後、ワイヤブラシで表面をブラッシングする。優しい趣のある表情が魅力的。
珪藻土撫切り仕上げ   珪藻土磨き仕上げ   珪藻土床叩き仕上げ
歩掛 3m2 /人日
特徴 表面を鏝で軽く撫でることで、独特の乾いた質感が強調されたテクスチュアが表現できる。
  歩掛 2m2 /人日
特徴 上塗り材を鏝で数回にわたって磨くことで、土壁とは違った微妙な色調や質感を得られる。
  歩掛 3m2 /人日
特徴 仕上げ材を叩くように十分に圧力を加えて塗り籠め、表面のノロをふき取って仕上げる。ふき取り方で多様な表情が出る。
珪藻土引摺り仕上げ        
歩掛 3m2 /人日
特徴 表面を引き摺ることで微妙な凹凸ができ、重厚でありながら安らぎと優しさを感じさせる仕上げが得られる。
       

珪藻土塗
施工性に優れ、自然の風合いを生かした多様な仕上げが実現
■特色
珪藻土に炭素繊維を補強材として混入した仕上げ材を用いる、近年開発された新しい工法。珪藻土の持つ保温・断熱・防露・調湿・防音などの機能を活かしながら、自然の土ならではの豊かな味わいや風合いを表現できる。また、骨材や各種混和剤の調合により、伝統的家屋から現代建築まで様式や用途を問わず、意匠性の高い仕上げを実現させることができる。
■適した部位
用途別に仕上げ材が製品化されており、内外壁や床・天井・塀など、幅広い適応性を持っている。
■性能評価
珪藻土はその表面に微細孔が無数にあるため、断熱・保温機能をはじめ、防露・調湿・遮音、脱臭機能など数々の特長を備えている。
■施工工程
外装および床仕上げの場合、乾きの遅い冬場はなるべく午前中に塗り付けを終えておく。施工後、数日間は、雨雪にさらされないように養生が必要。逆に夏場など急速に乾く環境下では、シートがけで養生する。内装仕上げでも同様に、冬場や水気の多い場所では施工後、通風を良くし、低温下では暖をとる
施工工程断面図
(内装仕上げ:石膏プラスターボード下地の場合)
施工工程フローチャート
内装仕上げ:石膏プラスターボード下地の場合
■下地
適切な処理を施せば、ほとんどの下地を使用できるが、内外装仕上げにおけるコンクリート下地への直接の塗り付けは不可。石膏プラスターボードを下地に使う場合は、継ぎ手部分を木工ボンド接着したり、ジョイントテープを貼り付けるなどの処理が必要。また、外装用仕上げ材にプラスターボード下地を使う場合は、カチオン系の下地調整材を使用する。
■材料と調合
珪藻土は吸水性が高いため、外装用仕上げ材には吸水防止剤を混入する。その際、要求される表情により硅砂や骨材を選択し、練り合わせる。内装仕上げ材は接着剤を希釈した液で混練りする。藁スサを加えることもある。
■仕上げ
【外装仕上げ】ブラッシングによる擬石調仕上げが主流だが「砂岩状仕上げ」「地層風仕上げ」「木肌仕上げ」など、骨材や施工法を工夫して多様なテクスチュアが表現できる。
【内装仕上げ】梨目の柔らかい風合いが表現できるペンギン鏝による「撫切り仕上げ」をはじめ、鏝で押える「漆喰調仕上げ」、藁スサを入れた「土壁風仕上げ」のほか、表面の掻き落とし、盛り付け・型押し、スポンジによるサークル仕上げなど、塗り壁のさまざまな表現が可能。
【床仕上げ】「叩き仕上げ」が主流。山砂を混合した仕上げ材を叩くように徐々に塗り籠めた後、ブラシでノロを取り、湿らしたスポンジでぬぐって仕上げる。乾燥後は、表面硬化剤を塗布する。
■メンテナンス
外装の場合、湿気の多い環境では表面にカビが発生する可能性がある。これを防ぐためには表面に撥水処理を施す。
珪藻土仕上げ材擦り塗りの施工 筋入れ仕上げの作業
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自然石のプリミティブな質感と肌合いを豊かに表現

洗い出し仕上げとは、種石を練り合わせたモルタルを上塗りし、それを洗い出して、自然な風合いを再現しようとするもの。混入する種石の大きさや種類によって多彩なテクスチュアを得ることができるとともに、プリミティブな質感と肌合いが表現できる。さまざまな建築物に幅広い用途が見いだせる仕上げである。
御影石洗い出し仕上げ
歩掛 2.5m2/人日
特徴 セメントに御影石の砕石を練り合わせたものを塗り付け、十分に押さえ込んだものを噴霧器を使い洗い出している。
1大磯石   2洗砂利   3御影石
4錆御影石   5那智黒石   6寒水石
7カナリヤ石        
 

人造石洗い出し仕上げ
混入する種石により、高級建築に適した豊かなテクスチュア表現を提供
■特色
種石とセメント、石灰を混練りしたものを塗り付け、その表面を水洗いすることによって、均質な工業材料にはない天然石のような豊かな表情を創り出す工法。混入する種石の種類や粒程度によってさまざまな表情を出すことができ、独特の品格や存在感が得られる。高級建築に適した仕上げを提供でき、耐久性・防火性にも優れている。
■適した部位
主に外壁部のほか、床・塀・天井などの施工用途がある。構造上大きな力のかかる部位にも適用できる。
■性能評価
混入する種石が高品質な骨材としての機能を持つため、乾燥収縮によるひび割れに強く、セメント以上に耐久性が高い。防火性にも優れている。
■施工工程
下地の清掃と処理を十分に行った後、下塗りと中塗りをセメントモルタルで行う(コンクリート下地、ラス下地の場合)。上塗り材料は付着性が低いため、セメントペーストやモルタルのアマ擦りを行い、追い掛けで上塗りを施していく。同時に、目地を適当な大きさに切っておき、木製の目地棒をセメントペーストやモルタルで固定する。上塗り後、鏝で表面を撫でたうえ、刷毛でノロをふき取り、丹念に伏せ込みを行う。伏せ込みは2~3度行い、種石の並びや頭をそろえる。
施工工程断面図
(コンクリート下地の場合)
施工工程フローチャート
(外壁の場合)
■下地
コンクリート、コンクリートブロック下地のほか、各種ラス下地(菱形ラス・メタルラス・ラスシート・リブラス・特殊ラス)が用いられる。それぞれの下地処理については「セメントモルタル塗」の項に準ずる。
■材料と調合
 
セメント
(白色セメント)
消石灰
砕石
外壁の場合
0.8
0.2
1.0~1.3
床の場合
1.0
1.0~1.5

混入する種石には、大磯石、御影石、那智黒石のほか、寒水石・カナリア石などの大理石、小砂利などがある。種石の種類によって異なる顔料を用いる。

■仕上げ
上塗り後、表面が硬化した頃合いを見て、まずブラシで表面のノロを軽く取り、噴霧器を使って洗い出しを行う。円形を描くように水を吹き付けていき、種石がきれいに浮き出るように表面を洗い流す。洗い汁が表面に残留すると剥落の原因になるので、十分に洗い落としておく(壁の上部などの高さのある箇所を施工する場合は、その下部に洗い汁がかかるのを防ぐため、薄紙を張り付けておくか、板で樋を作っておくて良い)。その後、水引き加減を見て、目地角を痛めないように留意しながら目地棒を静かに抜き取っていく。表面に残ったアクを取るには、10倍に希釈した塩酸を使用すると、ムラなくきれいに仕上げることができる。洗い出し仕上げでは、仕上がった壁面が原石に見えるように施工することを最上とする。
■メンテナンス
乾燥収縮によるひび割れは、正しく目地割り・目地入れを行うことで、その大半を防ぐことができる。目地棒はセメンペーストかモルタルで固定するが、その範囲をできるだけ狭くとどめておく(これを広くとると目地周辺から浮きが生じることになる)。
洗い出し材料作りの作業 洗い出し材上塗り(伏せ込み)の施工 洗い出しの作業

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しっとり落ち着いたたたずまい。天然の品格を備えた仕上げ

自然石の風合いを再現した仕上げであり、種石の選定によって存在感や格のある独特のテクスチュアが得られる。工程が多く手間と工期がかかるため、近年では施工される例も決して多くはないが、しっとりと落ち着いたそのたたずまいは、品格を備えた仕上げ工法として、再び見直される価値が十分にある。
カナリヤ石研ぎ出し仕上げ
歩掛 2m2/人日
特徴 微妙な色調が味わい深いカナリヤ石を、白セメントおよび顔料と練り合わせ研ぎ出した仕上げ。上品な風合いが魅力。
1カナリヤ石   2白サンゴ石   3黄立山石
4アワビ貝   5鎧石   6寒水石   7黒大理石
8紅サンゴ石   9加茂更紗石   10白鷹石   11オニックス石
12鳴戸石   13国華石   14白滝石   15黒加茂石
16吉野桜石   17牡丹石        

人造石研ぎ出し仕上げ
耐久性が高く、自然な素材感と味わい深い品格を備える
■特色
表面仕上げ層に種石を混入したモルタルを上塗りし、それを研ぎ出して自然な素材感を出す工法。工場生産の均質な塗り材にはない質感が魅力で、経年変化により味わい深い表情を見せる。塗り材に混入する種石の大きさは3~10mm程度。住宅の玄関床や社寺の階段、水槽などに多く施工されてきたもので、高級建築にも適した工法と言える。
■適した部位
外壁部のほか、柱、床、幅木などの施工用途に適用される。このほかにも天井や軒、階段などでも、主に蛇腹引きされた、繰り型の研ぎ出し工法を施すこともある。
■性能評価
セメントモルタルは乾燥収縮でひび割れしやすい性質を持つが、研ぎ出しの場合、混入する種石が高品質な骨材としての機能を持つため、セメント以上に耐久性が高く、特に摩耗に強い。防火性にも優れている。
■施工工程
下地の清掃と処理を十分に行った後、下塗りと中塗りをセメントモルタルで行う(コンクリート下地/ラス下地の場合)。上塗り材料は付着性が低いため、セメントペーストやモルタルのアマ擦りを行い、追い掛けで上塗りを施していく。前もって目地を適当な大きさに切っておき、真ちゅうあるいは木製の目地棒をセメントペーストやモルタルで固定しておく。上塗りの際には、塗り厚の取り過ぎが剥落の原因にもなるので、十分留意する。
施工工程断面図
(コンクリート下地の場合)
施工工程フローチャート
(外壁、土間・床の場合)
■下地
コンクリート、コンクリートブロック下地のほか、各種ラス下地(菱形ラス・メタルラス・ラスシート・リブラス・特殊ラス)が用いられる。それぞれの下地処理については「セメントモルタル塗」の項に準ずる。
■材料と調合
 
砕石
セメント

カナリヤ石1.2~1.5
1(白色)
寒水石1.2~1.5
1(白色)

研ぎ出し用の種石には、カナリヤ石をはじめ、寒水石などが使われる。着色剤を使用する場合は、種石の色より淡くなるように調合するのが良い。

■仕上げ
種石と種石との間に隙間がないように人造鏝で上塗り材をよく伏せ込み、ブラシでセメントノロを取り除いたうえでよく押さえ込んでおく。種石を均一に密着させることがポイント。その後、乾燥期を経て研ぎ出しにかかるが、寒水石のように比較的軟質の種石は約1日、硬質の種石は約2日間の乾燥期間をおく。冬場はそれ以上の日数をかける必要がある。研ぎ出しは研磨機やグラインダーを使って、60番砥石で荒研ぎする。荒研ぎ後の表面には無数の空気泡が出るため、上塗りと同じ調合のセメントノロでこれらを目つぶしする。次に中研ぎとして、120番砥石を使って表面をより平坦に研ぎ出した後、300番砥石で研ぎ、最後に浄源寺砥石で仕上げる。艶出しには、しゅう酸でアク止めを行い、ワツクス仕上げなどの処理を施す。
■メンテナンス
乾燥収縮によるひび割れは、正しく目地割り・目地入れを行うことで、その大半を防ぐことができる。目地割りは、その範囲をできるだけ狭くとどめておくと目地周辺から浮きが生じることがない。
モルタル中塗りの施工 研ぎ出し材上塗りの施工 ノロ取りの作業 研ぎ出し材伏せ込みの作業 荒研ぎの作業
BACK

石造風の独得の素材感や重厚さを容易に得られ、質感の幅も広い

本来は、塗り付けたセメントモルタルなどの塗り材を鏝や木片で叩いて引き起こす仕上げを指したが、その後、既調合セメントリシン材や合成樹脂エマルション系の吹き付けスタッコ材も登場して工法自体も変化していき、仕上げた際の質感の幅はより広がっている。変化に富んだ凹凸紋様のテクスチュアを表現でき、石造建築風の独得の素材感や重厚さを比較的容易に得ることができる。
樹脂モルタルスタッコ仕上げ
歩掛 4m2/人日
特徴 厚付け仕上げ塗り材である樹脂モルタルを鏝塗りして厚さ4~10mm程度の凹凸紋様に仕上げたもの。
ドロマイトプラスタースタッコ仕上げB   色モルタルスタッコ仕上げ
歩掛 4m2 /人日
特徴 ドロマイトプラスターを厚付けして、鏝で叩いて引き上げる、本来の工法による仕上げ。
  歩掛 4m2 /人日
特徴 色モルタルを塗り付け鏝で型付けする。その後、表面が適当な締まり具合になった頃合いを見て、凸部を鏝で軽く押さえる。
色漆喰スタッコ仕上げ   糊土壁スタッコ仕上げ
歩掛 4m2 /人日
特徴 顔料を混入した漆喰を厚塗りし、鏝で叩いて引き起こして仕上げる。漆喰独特の柔らかな肌合いが感じられる。
  歩掛 4m2 /人日
特徴 色土と川砂をふのりの溶液または粉末糊で練り合わせて厚塗りしたものを、鏝押さえして仕上げる。

スタッコ仕上げ
変化に富んだ質感と重厚な高級感を表現
■特色
もともと「スタッコ」とは、米国における外部塗り壁の総称。我が国には大正時代に移入され、昭和40年頃よりマンション・大型ビルなどで頻繁に施工されるようになった。その定義は地域によって多少の幅があるが、ここでは材料にかかわらず「鏝塗り仕上げ」に限定する。変化に富んだ石造建築風の質感と重厚な風合いが特徴で、比較的コストをかけずに高級な仕上がりが実現できる。
■適した部位
住宅および一般建築の内外壁、天井などに用いられる。
■性能評価
材料により、それぞれ「セメントモルタル塗」「プラスター塗」「漆喰塗」「土壁塗」などの項を参照のこと。
※樹脂モルタルスタッコ仕上げの場合
■施工工程(樹脂モルタルスタッコ仕上げ/コンクリート下地の場合)
下塗りはモルタルを下地に塗り付け、木鏝で押さえておく。乾燥後、塗り材を下擦りして上付けする。付けしろを厚くする場合は、中塗りを行った後、上塗りする。
施工工程断面図
(樹脂モルタルスタッコ仕上げ:コンクリート下地の場合)
施工工程フローチャート
(樹脂モルタルスタッコ仕上げ:コンクリート下地の場合)
■下地(樹脂モルタルスタッコ仕上げの場合)
コンクリート下地をはじめ、セメントモルタル下地、ALCパネル下地などが一般的。
■材料と調合
スタッコに用いられる厚塗り材には、塗料に近いものから左官材料に含まれるものまで多種多様な製品が市場に出回っている。それらの材料は一般に、セメント系および合成樹脂などの結合材、砂などの骨材、顔料などで構成されている。
■仕上げ
樹脂モルタル、ドロマイトプラスター、色モルタルなどのセメント系のほか、色漆喰、糊土壁を使用したスタッコ仕上げが可能。セメント系の場合は、塗り厚が5~8mmぐらいまでは1度で塗り付けても良いが、それ以上の場合は2回に分けて塗り付ける。塗り材は鏝塗りした後、専用器具または木鏝で引き起こしをする。その後、表面が硬化した時期を見計らって凸部を軽く鏝で押さえて仕上げる(引き起こしたままで仕上がりとする場合もある)。最近では、特殊な型押しローラーで押さえて変化に富んだ紋様を付ける方法も普及している。
■メンテナンス
施工後のクレームの要因には「材料」「下地」「施工方法および施工条件」の三つが考えられる。特に表面のムラ、ふくれ、剥離などは下地に原因があることが多いので、仕上げ材ごとに指定された下地処理を確実に行うことが望ましい。
ドロマイトプラスター上塗りの施工 引き起こし(叩き)の作業
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