建物の劣化に対しては当然、設計・施工時に十分考慮がなされるべきですが、維持管理が適正でない場合に起こる故障もあります。 屋外の部位では設計時に特に要求性能の正しい把握が不可欠でありますし、屋内部では、使用条件にも負う点が多いので、故障発生の原因をよく理解して、定期の清掃・手入れを含む維持管理に努めなければなりません。

【1】点検をおこなうための道具
打診用ハンマー
(軽めの家庭用金槌でもよい)
双眼鏡・ビデオカメラ・
デジタルカメラ
クラックスケール・細針金
・名刺・テレフォンカード
軽く叩いてモルタルの浮きや剥離箇所を推定します。イラストはタイルを診断するパルハンマーといいます。 肉眼では見えない高所、床下、屋根裏の観察します。目視と打診は簡便で重要な診断方法です。 ひび割れの幅や深さを測ります。針金や名刺等をひび割れ部分に挿入し、挿入が止まった位置で印をつけ、引き抜いて深さを測り、挿入深さが仕上げ層か下地からのひび割れかの判断基準にします。
下げ降り・五円玉を糸でたらす
(釣りに使用する錘でもよい)
伸縮スケール
(伸び縮みする物干しでもよい)
水準器・勾配計
(ビー玉、ゴルフボールでもよい)
柱や扉に垂らして壁、柱の傾斜を見ます。 天井高さ、室内内法寸法が同一であるかを計ります。 床などの傾斜の確認や測定ができます。
ルーペ 鉛筆
(同一製造会社のもの)
柔らかいウエス
(黒色及び白色)
微細なひび割れを観察できます。 仕上げ材の脆弱化程度が調べられます。 ウエスで払拭きし、その付き具合を見て劣化状態を調べます。手のひらでも簡単に確認できます。


【2】だれでもできる住まいのチェック
●陸屋根
  1. 排水状態の良否を確認、堆積物有無を点検。認められたら取り除く
  2. 防水層のふくれの点検
  3. 枯れ葉などの堆積物の有無を点検。認められたら取り除く
  4. 土間に植物の有無を確認する。認められたら取り除く
  5. 防水押さえのモルタルの欠損、せり上がりの有無の点検
水廻りにゴミがたまった状態です。 防水を保護するモルタルが劣化しています。


●コロニアル、瓦屋根
  1. トタン屋根の錆・破損
  2. コロニアルのコケ・カビ・藻の発生
  3. 瓦のずれ、敷き土の剥がれ
トタン屋根にかなり錆がでています。この状態では塗り替え、もしくは葺き替えです。何よりも大切なのは日頃の点検です。 コロニアル瓦にコケや藻が発生してます。雨上がりに点検すると良く判ります。


●外壁(仕上げ材)
  1. ひび割れ(特に窓周り)、変形及び破損、エフロレッセンスの有無を点検
  2. 錆及び腐食の有無
  3. タイル等の浮き、はらみ及び剥落の有無を点検します。落下等のおそれがある場合には応急処置をします
  4. 錆汁(特にコンクリートの建物)の発生の有無を点検
  5. かび及びコケ類の有無を点検(特に北側)
  6. 汚れ、汚れ原因の究明
木造住宅の窓下部分のクラックが起きています。雨水が侵入して、木質部分を腐食させます。クラック部分の補修を行って外装リフォームしましょう。 外壁部分に取り付けた設備管の腐食です。錆が錆を呼んで他に波及します。こまめな点検が必要です。 タイルに白華現象が発生しています。雨水の浸入がある証拠で、危険の前触れです。早急に専門家に診断してもらいましょう。
錆汁が発生しているのは、雨水の侵入が原因です。錆は膨張して、モルタル層を破壊します。 コケや藻によって外壁面が汚れています。放置しておくと大事な建物にも悪影響を及ぼします。そのうえ大変見苦しくなります。日左連の組合員に連絡下さい。 窓の周辺にシーリングを施しますが、その油汚れで非常にガンコです。シーリングが劣化しているか窓周辺を点検してみて下さい。


●打診用ハンマーで調べて見ましょう

モルタルが浮いているとカンカンと高い乾燥音がします。
慣れてくると判断ができるようになります。

浮き箇所でも以下のような違いがあります。

  • 浮いてるモルタル層が厚いと低い乾燥音
  • 浮いてるモルタル層が薄いと高い乾燥音
  • 浮いてるモルタル層が広いと低い乾燥音
  • 浮いてるモルタル層が狭いと高い乾燥音


●内壁(モルタル・漆喰・プラスター)
  1. モルタル・漆喰・プラスターのひび割れ・浮き・剥離・剥落の有無の点検
  2. 室内全体のカビ及び結露の有無を点検
  3. クロスの汚れ、しみ、剥がれ、キズ、変退色
  4. 和室等の繊維壁の汚れ、しみ、剥がれ、キズ、変退色
  5. 雨水もしくは結露による壁の汚れ


●汚れの基礎知識

外壁の汚れはの原因となるものは主に大気汚染によることが多いです。
その主なものは以下のとおりです。

1. ダスト
 ダストは気体に含まれる個体の粒子ですが硫酸イオンや塩素イオンが含まれれこれらは外壁を腐食させます。
2. 二酸化硫黄(SO2)
 硫酸ガスとも呼ばれています。金属の外壁を特に腐食させます。
3. 酸性雨
 PH5から6以下の雨のことを酸性雨と呼びます。大気汚染物質である窒素酸化物が雨に溶けて、雨が強酸性になって降り、モルタル等の劣化に影響を与えるだけではなく、人体や農作物にも害を与えます。


●洗浄剤の主な働き
  1. 洗浄剤で汚れに湿潤、浸透させ分離させます。
  2. 洗浄剤で汚れに乳化、分散させ混じりやすくさせます。
  3. 洗浄剤で汚れに汚染防止剤を塗って離れた汚れが再度汚染しないようにします。


●洗浄剤の特徴と方法

使用にあたっては必ず専門家に立ち会いのもとに行ってください。

1. 水
 すべての外装材に適用でき、安価で安全です。しかし油脂系の汚れや排気ガスによるすすの洗浄はできません。したがって水だけで外壁の洗浄を完全に行うことは難しいでしょう。
2. アルカリ洗浄剤
 油性の汚れや排気ガス等に有効でカセイソーダー等があります。使用後は十分な水洗いが必要です。
3. 酸性洗浄剤
 PH3以下の強酸とPH3以上の弱酸があり、白華などの汚れに有効です。また無機酸性洗浄剤には塩酸、硫酸等が有機酸性洗浄剤にはクエン酸、シュウ酸がありますが錆汁はシュウ酸を用います。アルカリ洗浄剤同様使用後は十分な水洗いの必要ですし、酸によって周辺の金具類を腐食させないようにする事が肝要です。
4. 研磨洗浄剤
 汚れが固着して洗浄剤による化学作用では除去出来ないときの用います。コンパウンド入りでペースト状に使いやすくなっています。