1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災では木造軸組住宅の問題点が顕著に露呈したことは記憶に新しい事であります。瓦の重量、木材の腐食、住宅の耐用年数そして施工不良などの全ての要因が絡み合い、安全であると言われてきた木造住宅が多数倒壊しました。左官に関わる部分では、外壁のラスモルタル仕上げが剥落したものが見られました。これらの建物の多くが住宅金融公庫その他の仕様基準を下回るものであり、また可成り経年した住宅でもありました。果たして木造軸組住宅は安全なのでしょうか?

それらの問いを検証する意味でも、その後、木造の耐震性能、各部位・部材における耐震性、耐久性が再度多方面において実験・検討されました。特に(財)日本住宅・木材技術センターが中心となって香川県多度津町の(財)原子力発電技術機構多度津工学試験所で「木造住宅実大振動実験」が行われ、(社)日本左官業組合連合会も実験に参加しております。

この実験は、ラスモルタル塗り仕上げについては実際の大きさの建物に阪神淡路大震災と同規模の振動を与えてその影響を計測し、適正な仕様・施工が行われたラスモルタル外壁であれば安全であるという確認を得ることを目的としています。その結果、外壁モルタルが優れた耐震性と防火性があることが判明しました。ラスモルタルの実験で研究グループの指導者でありました工学院大学難波蓮太郎博士は結果を次のように報告しています。以下に要約します。

地震エネルギーを吸収し、且つ高い剛性で木造軸組の変形を小さく保つ塗り壁

難波 蓮太郎博士
(工学院大学名誉教授・滋賀県立大学非常勤講師)

規準に沿った仕様・施工のラスモルタル外壁は、加振を繰り返すにつれて次第にひび割れの発生が増加していきますが、そのひび割れ発生によって地震エネルギーを吸収しています。これは、モルタルが木造軸組の耐震性に寄与しているものと考えられ、そして最後まで外壁モルタル層は振動による外力に抵抗しており、木造軸組住宅の耐震性を担う重要な役目を果たしていることが実証されました。

同時に行われた外壁がサイディング張りの実験では、サイディングは板材間の継目ですべりを生じて、容易に変形してしまい、ほぼ木造軸組でしか地震力に抵抗出来ませんでした。これはサイディングが壁構成での強化が乏しく、釘だけでは木造軸組躯体へ固定が一体化するには不十分で、したがって、モルタル層の壁に比べて変形が大きくなり、モルタル壁より、剛性が高くないことによるものです。木造住宅は柱・はり・筋交いなどの軸組だけでは耐震効果は2/3程度にとどまるといわれ、モルタル外壁層などの付帯した部材によって1/3を補わなければならずはじめて満足する耐震性を得られるといいます。

これによって外壁ラスモルタル塗りの仕上層は総じて木造軸組への耐震性寄与の面でかなりの役割を発揮することが実証されました。規準に沿った外壁のモルタルでは、地震の最中ではひび割れを起こすことによって地震エネルギーを吸収し、且つ高い剛性で変形を小さく抑えており、木造軸組の耐震性に大きく寄与しており、地震が収まった時点でのひび割れ幅は小さくそれはその後、予想される火災の防火性能を充分満たしています。