土物仕上げ工法

茶室に表現された文化はまさに日本文化の本性や日本人の精神性そのものに関わるもので、茶室建築の精神は、広く民家建築に影響与えました。しかし茶室建築の創始者たちは逆に一般民衆たちの生活文化の中から学び、昇華させと言えるでしょう。茶室建築の壁の名称が現在、日本壁として存在し、いまだに言い伝えられ、また技術として存在すること左官を営む者にとって誇りとするところです。

【1】荒壁塗り

木舞下地は土台、柱、胴差などの躯体の部材に数カ所に貫を差し込んで、その全体が支えられています。その両端は各部材に堀り込んだ穴に挿入していますが、各部材に突き付けにされ、固定されていません。従って、木舞の周辺の構造部材にゆがみが生じても、壁全体に応力は伝わずちり際で応力を吸収します。そのため、壁面にクラックが生じることはまれであり、散り際での小さなクラック、剥離が起きる程度です。木舞下地に荒壁塗りをおこない裏壁塗りをすることによって、木舞竹があたかも鉄筋コンクリートの鉄筋のような立骨的な役目を果たします。そのため厚塗りする事が可能で、大津磨きや漆喰磨きなど壁に圧力をかけることができるのです。厚みのある土で構成されているため、乾燥に時間がかかり、工期を大事にする現代では残念ながら施工が少なくなってきています。

【2】水捏ね仕上げ

京壁の上塗りの中で水捏ね仕上げは、自然の壁肌を表すことが重要で壁全体に同じ壁肌を作り出すことによって、建物に豊かさを与えます。水捏ね仕上げは、色土の粘性のみでバインダーの役目するために作業性が悪く、保水性に欠けるため、表面にむらになりやすく、厚塗りになり仕上げの技量を必要とします。しかし糊を使用していないため外壁に塗ることが可能であり、水捏ねで塗られた上塗壁面は粘土がバインダーとしての役目が終了するまで半永久的であるといえましょう。古来より草庵茶室、高級工事には水捏ねの工法がとられています。

【3】糊捏ね仕上げ

糊差し仕上げの濃い材料やあるいは色土に直接糊液を混入するものをいいます。糊捏ね仕上げは、糊を媒体として色土の粘性を増し、保水効果を高め、本来は布海苔、角又糊を使用しますが、最近ではMCや合成樹脂などを利用することもあります。糊の効果によって仕上げ材は薄くむらなく平滑に仕上がり、水捏ねのような難しい技量は必要としません。しかし糊によって固められているため糊の効果が経年によって失ってくると上塗壁面はもろくなってくることは歪めません。当然雨があたる外壁には不向きです。

【4】三和土仕上げ

古くは飛鳥・天平のころ大陸からの伝来とされたされています。しかし、それ以前から存在していたかもしれません。三和土は各地の地場の土(たたき土、サバ土、マサ土、深草砂利等)を用いて土間や床や犬走り、柱の布基礎、土蔵の腰壁等に用いたもので、石灰と苦汁を加えてたたきしめたものです。茶室などでは深草のたたきや土間の三州たたきが有名です。従来、たたきはセメントのない時代の工法ですが、長く忘れられた土間の優しい風合い、既存の床材では得られないソフトな歩行感覚が得られます。 現在、材料・工法の改良によって、土持つ素材感を失わず現代建築にマッチする三和土仕上げが開発されています。自然素材、リサイクル仕上げとしても注目をあびることでしょう。

紅がら・水ごね 浅黄土・大津仕上・ハケ引 中塗・引摺仕上
浅黄土・大津仕上・鉄屑入 いなり・もみじ壁 浅黄土・中塗仕上
浅黄土・チリメン仕上 錆土塗・鉄屑入 土壁・墨入・引摺仕上・長スサ入